アバディーン・スタンダード・インベストメンツ 2020年のアウトルックを発表
2019年11月15日世界的に経済は停滞するが不況には至らない
経済の低成長、低インフレ、低金利を伴う現在の長期的な経済の停滞は、今後5年間の世界経済の見通しを決定づける様相を見せています。2020年に向けて追加で発動される可能性のある各国の政策と政治的な不確実性は、産業、貿易、投資の分野に引き続き影響を与えるかもしれません。ASIでは2020年と2021年の世界のGDP成長予測を3.1%に下げましたが、これは金融危機後の平均を大きく下回る数値です。来年世界が不況に陥ることは避けられるかもしれませんが、そのリスクは確実に高まっています。
ハト派の中央銀行によるクッション効果
中央銀行による明確な金融緩和は、影響は小幅ながらもポジティブなレベルで経済成長を支えるとみています。ASIではこの小幅なサイクルによる米国連邦準備制度理事会(FRB)の最後の利下げがどこかで実施され、欧州中央銀行(ECB)がそれに追随することを期待しています*。また、オーストラリア、カナダ、ブラジル、中国、インド、ロシアの各国中央銀行による今後数カ月内の対応や、政府による各種財政政策導入による効果も期待ができ、こうした措置が市場の相場変動の際ショックを緩和するクッションの役割を果たすものと思われます。
*本コメントの原文は2019年11月13日(水)英国時間8:00に発表されました。
政治、貿易摩擦リスクによるセンチメントの押し下げ
困難さを増す英国のEU離脱問題、世界中で高まる保護主義や貿易摩擦問題など、投資家は地政学的リスクの高まりとその影響を引き続き注視しなければなりません。政治的不確実性が長期化すると、グローバルな貿易活動や企業への投資、産業サービスなどに対し、恒常的にセンチメントに左右されやすい状況が生じやすくなります。米中貿易の問題は依然重要なリスクであり、迅速な解決は見込めません。韓国と台湾はテクノロジー分野における貿易摩擦に対して脆弱です。日本と韓国間の摩擦も、グローバルな技術サプライ・チェーンをさらに混乱させるかもしれません。
伝統的資産が再び脅かされる可能性
ASIでは伝統的資産からの運用収益は過去に比べはるかに低くなると予想しており、実際、各国の多くの国債のイールドはネガティブな数値を示しています。景気循環が終盤に向かうこと、そして企業収益の拡大余地が小さいことは、株式からのリターンが長期の平均を下回ることを示唆しています。株式から国債、そして投資適格債へといった古典的なローテーションは、現在のサイクルにはもはや適さないかもしれません。
構造的なテーマは長期的な投資機会を創出
今後10年の間、気候変動や技術的破壊などの構造的なテーマは投資妙味のある市場を創出すると思われます。長期のリターンが期待される重要なドライバーには、人口動態の変化を含んだ環境、社会、ガバナンス(ESG)の要素があります。また、5Gや人口知能といった革新的なテクノロジーが新たな投資機会をうみだすため、テクノロジー・セクターの見通しは現在の低水準から大幅に改善される可能性があるでしょう。
投資機会
低相関資産を分散
現在のような市場環境では従来の株式・債券への投資のみならず、さらに慎重かつ分散された投資アプローチが必要です。新興市場と日本の株式は依然魅力的に見えますが、代替となるリスク調整後の期待収益はその他のより馴染みの少ない非伝統的資産クラスからもたらされるかもしれません。例えば、現地通貨建て新興国ソブリン債の長期的な見通しは非常に強く、予想利回りは6%近くとなっています。また市場のボラティリティが上昇したときの分散効果を期待し、ASIでは米国物価連動債(TIPS)や円をオーバーウェイトしています。
代替資産からの収益を高める
非流動性リスクを許容できる投資家の皆様には、プライベート・エクイティ、プライベート・デット、インフラストラクチャー、不動産といった株式のボラティリティと相関の低いプライベート・マーケッツ資産が、ポートフォリオ分散のメリットをもたらし、パブリック・マーケッツを大幅に上回るリターンをもたらす可能性があると考えております。ASIでは特にインフラストラクチャーを推奨しており、相対的に高い利回りと市場動向に左右されにくいキャッシュフローで非常に魅力的な分散効果を期待することができると考えています。
ESGとテクノロジーへの投資
長期的な投資機会はESG、低炭素エネルギーへの移行、技術破壊などにあるでしょう。気候変動への取り組みには、電力、産業、運輸、不動産、農業といった各分野におけるエネルギー使用の大幅な変革が必要とされます。パリ協定の目標を達成するには、再生可能エネルギーへのグローバルな投資を年間7,000億ドルに倍増する必要があります。これが私達が取り組む全ての投資戦略の根幹にESGへの考慮が必要とされる理由です。さらに、人口知能の革新的技術の台頭は単に私達の商慣行を変えるだけでなく、新たな投資機会をもたらし、経済活動における勝者と敗者を今後生み出すでしょう。
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アバディーン・スタンダード・インベストメンツについて
- アバディーン・スタンダード・インベストメンツはお客様への長期的なバリューの提供に注力するグローバルな資産運用会社で、1,000名以上の運用プロフェッショナルを擁し、5,257億英ポンド(約72兆円、2019年6月30日現在、1英ポンド=137.12円で換算)の資産を世界中で運用しています。現在世界の約40拠点を通じて80カ国のお客様にサービスを提供しています。
- チームワークとコラボレーションが持続可能な高パフォーマンスを提供する鍵であるとの確信の下、長期的な視点に基づく運用を行っています。また、アクティブ運用にコミットしています。
- スタンダード・ライフ・アバディーンplcはスコットランドに本社を置き、ロンドン証券取引所に上場(株主数約100万人)しています。