アバディーン・スタンダード・インベストメンツ 2020年のミッドイヤー・アウトルックを発表~コロナ後の新たな投資機会を見据えて~

2020年7月13日
アバディーン・スタンダード・インベストメンツ(Aberdeen Standard Investments、以下ASI)は、2020年のミッドイヤー・アウトルックを発表しました。ASIのチーフ・エコノミスト及びアバディーン・スタンダード・インベストメンツ株式会社(ASI Japan)のインベストメント・スペシャリストは、コロナ後を見据えたグローバル市場の見通し、またその見解を受けた債券・株式などの資産クラス別の見通しや投資機会、アセットアロケーション戦略について投資家に以下のメッセージを発信しています。

ASI チーフ・エコノミスト、ジェレミー・ローソンのコメント

未曽有の危機からの脱却(Emerging from the Depth)

今後の世界経済の成長シナリオは「逆J」字型に緩やかに回復し、そのスピードは景気悪化時よりも遅く、継続的な生産性の損失を伴うと予測されます。また、新型コロナウイルスによる各国の実質成長率への影響度合いは、感染拡大の規模、封じ込め政策の期間および成果、各種政策の有効性により異なります。中国経済は最悪期を脱したものの、サービス・セクターのやや遅い回復と外需産業停滞の打撃により、回復は緩やかなものとなる見通しです。新興国では各国の対応の遅れやばらつきから、資本の流れが止まり、急激な悪化が懸念されます。先進国経済においては、大恐慌以来といわれる景気の悪化が2020年第2四半期にみられると予測されています。

さらに、今回のコロナ禍は各国の医療制度、社会保障制度、そして国際的なサプライチェーン管理において重大な変革をもたらすと予想されます。中期的には、コロナ危機を受け、世界経済はディスインフレに向かうとみているもものの、今後数年間の政策体制の変化により長期的なインフレの確率分布は広がり、今後の先行きは決まるものと予測されます。

主なリスク要因としては、米中の衝突、債務の持続性、インフレの可能性が挙げられます。米中の衝突に関しては、グローバルな地政学的衝突は、コロナ危機により複雑さを増すと予想されており、米国での大統領選を受け、米国の有権者は中国に対してますます懐疑的になることが予想されると共に、コロナ危機によりグローバル化の軌道が変更してしまう可能性が指摘されています。債務の持続性に関しては、規制および税制面における国家の役割が増大し、債務が膨張することが懸念されています。一部の国では公的債務の増大が長期的な成長の足かせになると共に、新興国間の差異は拡大し、個別のアプローチがますます重要になってくることが予想されます。インフレに関しては、金融緩和策やサプライチェーンの分断がインフレ加速のきっかけになる可能性も指摘される一方で、先進国の水準は世界金融危機以降の時よりも低く、今回のコロナショックにより同様の道筋を辿る可能性もあることから、今後はインフレの加速、もしくはより低インフレに向け、リスクが増加する可能性があります。

これらの見通しにより、アバディーン・スタンダード・インベストメントとしては、依然リスク含みではあるものの、資本構造においてシニア寄りの資産および高クオリティ企業への投資に着目しています。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツ株式会社 プロダクト・スペシャリスト部によるコメント

上記のマクロ見通しを受けて、アバディーン・スタンダード・インベストメンツ株式会社の3名のインベストメント・スペシャリストが、担当する資産クラス別の投資見通しおよびその機会についてコメントしました。

プロダクト・スペシャリスト部 インベストメント・スペシャリスト前山 亮介(マルチアセット担当)

ASIのタクティカル・アセット・アロケーション(TAA)チームでは代表的な資産クラスについて、今後6カ月~12カ月の見通しを『マクロ』『バリュエーション』『マネタリー』『投資家行動』の4つの指標をもとに以下のように推測していますが、先進国債券については各国中央銀行が大胆な金融緩和策に踏み切ったことが好感されるものの、バリュエーションおよび投資家行動の観点から相対的にネガティブな見通しとなっています。社債・新興国債券の分野ではハイ・イールドにおける企業収益の減少およびデフォルトの増加、新興国においては追加のコロナウィルス対策による財政状況の悪化などが懸念されマクロファクターがネガティブとなっている一方、バリュエーションやマネタリーは強気となっており、概ねポジティブとなっています。株式については経済の落ち込み、企業収益への影響によりファンダメンタルズがネガティブとなる一方、流動性が供給されていることでマネタリー面でポジティブとなり、総じてニュートラルな見方となっています。

このような見通しをもとにマルチアセット運用部門では絶対収益追求型、多資産分散型の戦略など様々な運用を行っていますが、具体的な投資テーマとして今後も大規模な金融緩和が予想されることから通貨・金利のデュレーションに着目した戦略や、大規模な財政政策による消費回復、再生可能エネルギーなどESGへさらなる注目が集まることなどに鑑み、インフラ株式、特に今後グリーンディールなど具体的な財政支出の恩恵を受ける可能性がある欧州などに注目しています。また、金融・財政政策の影響や地政学リスクによる市場のボラタイルな局面に備え、国およびセクター別の動きに着目した各国の株式にも注目し、運用を行っています。

プロダクト・スペシャリスト部長 植田八大(債券市場担当)

債券市場では金利低下による国債投資の期待収益の減少、中央銀行の流動性供給によるボラティリティ低下などにより、当面の間、国債市場のアクティブ運用の裁量幅が限定的となることが懸念されます。そのような中、総合型/国債型運用からクレジット(社債)戦略への転換が有効であると思われます。クレジットは魅力的な信用スプレッドを提供することに加えて、銘柄間のボラティリティも引き続き一定程度で推移することが予想されることから、アクティブな銘柄選択による超過収益の獲得も期待できます。その他にも、クレジット戦略におけるデュレーション・オーバーレイの活用も有効と考えており、デリバティブを用いて保有社債の金利リスクを中立化し、魅力的な信用スプレッド分の金利を享受しつつ、デュレーション・オーバーレイ部分を現物債ポートフォリオから独立して管理することにより、アクティブな銘柄選択からの追加的なアルファ獲得も可能と考えています。また、日本の機関投資家のクレジットポートフォリオは、先進国、特に米国クレジットに集中しており、、追加的な利回りの獲得、およびポートフォリオの分散化の促進という観点から、エマージング・クレジット市場を活用することも一案であると考えます。同市場では投資適格債市場も十分な規模まで拡大しており、先進国クレジット市場に対するプレミアムが期待できる上に、金融シニア債も相対的に魅力的なスプレッド水準を提供しています。

プロダクト・スペシャリスト部、シニア・インベストメント・スペシャリスト、中西健一(株式担当)

2020年の市場動向としては、コロナ禍を受けた急速なリスクオフ、およびその後の反発が挙げられます。下落相場では、全業種が下落し、特にシクリカルなエネルギーや素材、資本財の下落が顕著でした。また、景気減速への懸念から銀行を中心に金融も大きく下落しました。その一方で、治療薬への期待や在宅勤務への投資拡大期待を背景に、ヘルスケアや情報技術が相対的に堅調に推移しました。4月以降には、下落していた業種の反発が確認されていますが、選別化が明確に表れ、情報技術などは続伸する一方で、金融などの反発は弱いものにとどまっています。このような中、下値抵抗力や回復力によって、リスクを抑えた運用を実現するグローバル小型株に投資する戦略が注目されます。ASIの世界小型株投資戦略では質の高い銘柄への投資を通じて、下値抵抗力のある運用を実現しており、設定来では安定した月次の超過収益を獲得しています。特に下落局面でベンチマークのリターンを上回ることで、下落幅を低減し、上昇局面で市場と同程度の上昇を維持することで、リスクを低減した運用が可能になっています。コロナショックを経て再注目する投資分野としては、ヘルスケア、コンテンツ管理、5G、キャッシュレス、新たな生活様式などが挙げられます。

注)上記コメント・市場見通しはアバディーン・スタンダード・インベストメンツ株式会社が2020年6月23日に投資家向けに実施したセミナーにもとに作成されています。

###

アバディーン・スタンダード・インベストメンツについて

  • アバディーン・スタンダード・インベストメンツはお客様への長期的なバリューの提供に注力するグローバルな資産運用会社であり、アバディーン・アセット・マネジメントおよびスタンダード・ライフ・インベストメンツの資産運用ビジネスのブランドです。
  • 1,000名以上の運用プロフェッショナルを擁し、4,865億英ポンドの資産を世界中で運用しています。世界約40拠点を通じて80カ国のお客様にサービスを提供しています。(2019年12月31日現在)
  • チームワークとコラボレーションが持続可能な高パフォーマンスを提供する鍵であるとの確信の下、長期的な視点に基づく運用を行っています。また、アクティブ運用にコミットしています。
  • アバディーン・スタンダード・インベストメンツは、世界有数の運用会社であるスタンダード・ライフ・アバディーンplcの資産運用ビジネスです。
  • スタンダード・ライフ・アバディーンplcはスコットランドに本社を置き、ロンドン証券取引所に上場(株主数約120万人)しています。スタンダード・ライフ・アバディーン・グループは、2017年8月14日のスタンダード・ライフplcとアバディーン・アセット・マネジメントPLCの合併により誕生しました。